世界初、生きたオロシザメの捕獲

 この時、オロシザメの捕獲は世界で二回目。一回目はおそらく生体ではなく、生きたオロシザメの捕獲は世界で初めてのこと。江の島沖で捕獲。

 タカアシガニを展示している水槽しか適水温のものが無かった。オロシザメ用に新たに作ろうと思うが間に合わない。仕方なくタカアシガニ水槽に放した。

オロシザメは配管の噴き出し口に逆らって深海に帰ろうと頭を下げ泳ぐ。すぐにフラッシュ撮影禁止の張り紙を用意する。サメを失明させてはいけない。

翌日、たくさんの新聞社やテレビ局が来て、生きたオロシザメの写真を撮影した。新聞は全国紙にも掲載された。

共同通信社

水槽の前でサメの解説をしていると、一人の男性が近寄ってきてサメのことをいろいろと質問してきた。一般のお客様ではない見識。北海道大学の仲谷一宏先生であることがわかった。

仲谷先生は生きたオロシザメが見たいとわざわざ北海道から足を運んでくださった。直接お会いしたのはこれが初めて。積もる話もあり家に招いた。先生もお酒が好きで、呑みながらサメの話をする。

よく覚えているのは、「世界で二番目に大きいウバザメとイワシを泳がせてはどうか?」と聞いたこと。「種が違い、ジンベイザメのようにオキアミを吸い込むことが出来ないので飼育が出来ない。」と仰った。

他にもいくらか質問を投げかけたが、間髪入れず的確な答えが矢のように飛んでくる。厖大な知識量を感じざるを得なかった。

数日後、仲谷先生からサメの文献を寄贈された。私にとって何よりの宝物となった。

Biology of the Megamouth Shark
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