大水槽の清掃

大水槽の清掃はベテランダイバーが行います。

ダイバーは、水槽内にある擬岩を洗うためのタワシとアクリル面を清掃するネルを持ち潜水します。

ダイバーはボンベがアクリル面と接触するとアクリル面が傷ついてしまうため、慎重な作業を要します。

魚類が病気になった場合

展示されている魚類を病気にさせないことが、飼育員の重要な仕事です。しかし、時には病気になることもあります。治療の甲斐なく死んでしまうこともあります。そんな時は、どうするのでしょうか。

  • 展示魚類が大水槽で死亡した場合、どのような原因で死亡したかを確認します。他の魚類にも伝染する病気の場合、すぐに対処しないと他の健康な魚類にもうつってしまいます。 体表に寄生虫が付いていないか確認。 淡水浴を行い寄生虫が確認されれば、 顕微鏡で種を同定し、薬を撒布します。白点病などの場合には、鰓や体表から組織を取り、顕微鏡で確認を行う
  • 薬は、硫酸銅の場合1tに対し1gを基準に撒布します(1ppm)。大水槽の水量は約1360t (濾過槽を含む) ですので、 1360gを1日1回、3日間水槽にまんべんなく撒布するため、ジョウロを使用します。
  • 水槽に薬を撒布した場合や、魚類が死亡した場合、新しい魚類が搬入・搬出された場合には、しっかりと記録を取り後に使う資料を作成します。

魚類を展示するまで

大水槽に展示されている魚類は、活魚運搬船に乗せて搬入されます。 搬入される魚類は直接網ですくうと体表が傷つき病気になりやすいので、 水ごとミズダモですくい、予備水槽に移し摂餌は良好か、病気はないか様子をみます。 水槽に慣れ、元気になったところで展示水槽に初めて移されます。

①捕獲畜養

捕獲の方法は、定置網に入網するもの、巻き網によるもの、 底引き網、釣りなど様々です。

捕獲された魚類はいったん現地の生け簀で畜養され狭い環境に慣らします。

また、餌を良く食べるか、捕獲の際体表が傷つけられていないか確認し、 輸送準備に。

② 輸送・予備水槽での病気の確認

輸送される魚類は餌止めをします。 狭い輸送環境の中で魚類が糞や尿を排泄行ったり、胃の内容物を吐き出すと、水質の悪化を招き輸送中の魚類を全滅させてしまう恐れがあります。 そのため餌止めを行います。

餌止めをする日数は、飼育水温や種、個体の大きさなどによって異なります。

輸送に必要な機材、 タイムスケジュールを確認し、 輸送に移ります。

輸送に必要な機材

水温計、酸素瓶、レギュレイター、エアーストン、エアーホース、 ホースレンチ、タモアミ、 夏は海水氷、冬はヒーター、あれば新鮮海水と入れ替え用水中ポンプ

水族館搬入

輸送されてきた魚類は、状態を確認します。また水温などもチェックされ、搬入しようとする水が水槽の水温と異なる場合には、搬入しようとする水を活魚槽に入れ、徐々に水合わせを行います。

そうすることにより、水温以外にpHや、塩分の違いによるショックをやわらげます。

その際、魚類の取り上げは、タモアミで取り上げると魚類の体表が擦れてしまいますので、水ごと水ダモですくいます。

搬入された魚類は、いったん予備槽で畜養し、餌に慣らし、輸送による擦れなどを治し、病気が無い事を確認した後、大型水槽に搬入されます。

餌を与えるまで

大水槽に展示されている魚類には、アジ・サバなどの日本沿岸でたくさん捕獲される多獲性魚類を餌として使用する。多獲性魚類は、価格も安価で安定して供給できるため。新鮮で急速冷凍したものを与えます。

マイナス55℃~マイナス35℃で急速冷凍した餌は、週に一度一週間で使用する分の餌を保冷車で運びます。急速冷凍する理由は、餌の中の寄生虫やその卵を死滅させること、餌の鮮度を保つことが目的です。搬入された餌も冷凍庫に入れ、マイナス25℃で保存されます。

使用する餌は、調餌場のシンクで解凍され、与える魚類の大きさに合わせ調餌されます。食べやすいようにエビは皮を剝き、イカは飼育水を汚さぬよう内臓を取り去り輪切りにして与えます。餌の中にはレタスなどもあり、丸ごと水槽に入れハギなどの餌にします。

与えるえさの量は、毎日目方を量り、魚の餌の摂餌が良好か、残ってしまった餌はないか確認します。1日の餌として与える量は、魚体重当たり3%を基準にしています。

餌は、大水槽上にあるキャットウォークから与えます。水槽の底にいる魚は、バケツにひもをつけ、水槽底まで餌を持っていき、そこでバケツをひっくり返して餌を与えます。また、一日2回ダイバーが水中給餌を行い餌が行き届かない魚に餌を与えます。

大水槽の透明板はなにで出来ているのか

大水槽はアクリルで出来ていて、最も厚いもの25㎝もあります。

アクリルが大水槽を可能にしました。

ガラスに比べアクリルは下記のような特徴がある

  1. 面接着によって、サイズや厚さ、変形など加工が容易(140℃で変形)。
  2. 保温性・衝撃吸収力に優れている。
  3. 板自体にねばりがあり、万一割れても裂け目から水が漏れづらい。
  4. ガラスのように開口部すべてが割れ、内部の水が急激に観覧側に流れ出ることもない。
  5. 強化ガラスの場合自爆作用がみられ、またゆがみや集中応力に対しても簡単に破壊されてしまうが、アクリルは相当程度まで耐えられる。
  6. ガラスに比べ膨張収縮(特に水温、水分)が大きいので、取り付け部に余裕を持たせる、水の注排水もデリケートに行わないとコーキングが切れて漏水の原因となる。
  7. 薬品や熱に弱く表面硬度もガラスに比べると劣るので取り扱いや収容魚種に注意がいる。

1:アクリルパネル 2:シリコンシーラント 3:ネオブレンパッキン 4:スペーサーブロック 5:プレキャストコンクリート 6:エポキシライニング 7:防水モルタル 8:アンカーブロック